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<<   作成日時 : 2008/09/03 23:12   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 6 / トラックバック 0 / コメント 11

○記者は、因果な商売

 同じ新聞でも、タブロイド紙と聞くだけで、どうしても信用が薄くなる。いっぽう、週刊誌と言っても、手堅い取材をもとに、立派な記事を書いている記者もいるはずだ。

 自戒を込めて、正確な記事を書くことは、とても難しいことを白状しておく。誰かに何かを聞き、その通りを記事にしたとの自信を持っていたのに、アップされた記事を読んだ取材対象者が、「わて、ほんなこと言うてへんでー」と申し出てこられることがある。「すみません……」明らかな間違えは、お詫びをして訂正をしなくてはならない。表現に「逃げ」があって、余計な憶測を招く書き方をしてしまったり、「どちらとも受け取れる」曖昧さが悪く転ぶと、手強いクレームの原因になる。

 記者とは、なんやかやと、かなり神経を使う仕事なのである。

○ジャーナリズムのモラル

 映画『ニュースの天才』を見るように勧めてくれたのは、友人の声楽家だった。1998年、アメリカで本当に起こった、”名門”政治雑誌記事の一大捏造事件を題材にして描かれている。

 大統領専用機の中に常備されている唯一の政治雑誌『THE NEW REPUBLIC』誌上に、27本もの特ダネ記事を捏造していたのは、スティーヴン・グラスと言う名の最年少記者。―――しかし、誰もその事実に気付いていなかった。

 スティーヴンは、インターネット関連の特ダネ・スクープ記事を書き、大反響を呼び起こす。だが、対抗心から同じネタを追いかけ始めた、別のネット系雑誌社の編集部に怪しまれる……。

 そのようなストーリーである。

 ジャーナリズムのモラルを問うた、地味ながらも興味深い作品だ。

○文章いろいろ

 操觚―――文章を綴って表現し、仕上げるものには、新聞や雑誌の記事のほか、小説もあればエッセイも、はたまた論文もある。小説は基本的にフィクションであって、リアリティーを醸し出すため、充分に下調べをして正確に書く必要のある部分を除くと、あとは嘘八百のかたまりだと言ってしまうこともできる。エッセイにも一定の正確さを要するが、たいてい「私は、これこれこう感じた」「……と思った」などと、感慨深く書いておれば、それで済んでしまうようなところがある。論文の場合、「……である」「……と判断する」と結論を出さなければならず、「……だと思う」「……かも知れない」などと書いているようでは、容赦なく落とされる。

 新聞や雑誌の記事と名の付くものは、原則として一人称を使わない。記者(書き手)の主観も入ることは入るが、できるだけ客観的、複論併記的に書くことが求められ、一方的な意想への誘導を避けなくてはならない。とは言え、いろいろな判断や分析があることを示し、書き手(記者)の不偏不党的姿勢を感じさせながらも、読み終わると、何やら一定の見解に立って納得させられてしまうような、粋な記事が書ければ上出来だ。

 ただし、ものごと何につけ限度というものがある―――。

○これは限度を超えている

画像

 さて、「SPA!」という週刊誌をご存じでしょう。僕はいま、その「9月9日号」を脇へ置いて書いています。

画像

 たまたま、「急増中・『デモやろうぜ』ブームに肉薄!」という特集記事の中に、東京のLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)パレードを取り上げた一章を見つけまして、読んでみたのです。(P23:下二段)

 すると―――この記事、どうもおかしいのです。
 間違ったことばかりが書いてあるように思います。
 以下、*印は記事の言及、→印は反論。

 * (デモではなく、パレードと申請することもできる)<2行目>

 → これは違います。あくまで警察サイドには「デモ行進」でしか届け出ができないはずです。パレードと称していますが、実際には一般のデモ行進の扱いなのです。

 * ’07年8月に行われた、そのパレードは、「コスプレ自由」。「入退場自由」というもの。<11行目>

 → これは違います。公式ガイドブックには、「肌の露出は控えましょう。昼間の公道を歩きます。性器、女性の胸の露出はもちろん、ケツ割れなど、お尻が出るような服装もご遠慮ください」(P16)とあります。

 → 入退場も、自由ではないはずです。あらかじめ受付をした人しか隊列に入れませんし、人数制限もあります。途中で体調が悪くなった人が離脱できるのは当然として、パレード中は隊列を出入りできないはずです。

 * ……今年のパレードは主催団体内部の権力闘争が原因で中止になったとか。<27行目>

 → これも間違い。権力闘争との説明は全く当たりません。詳しいことは、ここに書いてある(クリック)のですから、担当記者も、きちんとチェックするべきです。

 * 「なんか、その主催団体が社民党と繋がっているという話があって……」<30行目>
 * 「……政治家とつるんでカネを得ようとしているヤツがいる、と疑心暗鬼になってしまうんです。楽してカネを得ようなんて許せない!」
<35行目>

 → これは、ひどいデマです。デマを、何の検証もなく載せてはなりません。社民党と東京プライドが繋がっていたなど、聞いたことがありません。根拠があるなら明示して下さい。いったい、誰が政治家から金を貰っていたと仰るのですか。源情報を教えて下さい。楽をしてお金を儲けたと仰いますが、パレードの主催者たちは、半ば個人の生活を犠牲にして奮闘して下さいました。何を以て「楽をして」などと言えるのでしょう。お金についても、では幾ら貰っていたと仰るのか、きっちりと示して下さい。批判は自由ですが、ウソはいけません。ウソではないと仰るのなら、根拠を出していただきたい。表立って出せないのなら、個人的にお会いしても宜しゅうございます。

 記事では、情報提供者とされる高田幸治(仮名:39歳)なる方が、いろいろ、お述べになったとされています。しかし、23ページの左上には写真が載っており、そこにこの高田なる方が顔を出しておられます。文中では仮名なのに、写真では、なぜ顔出しなのでしょう。

 それに、この写真が怪しゅうございます。文中の記述によれば、パレード参加当日に撮ったはずなのに、この高田なる方のほか、周囲には誰一人として写っていません。僕には、これがパレード当日の写真とは思えないのですが。

 もっと申しますと、「SPA!」の担当記者は、この記事を本当に取材してから書いたのでしょうか。甚だ疑問を感じます。取材もせずに書いたのだとしたら、この記事は捏造です。

 ジャーナリズムのモラルは、いったい、どこへ行ってしまったのでしょう―――「SPA!」の場合は。扶桑社さん?

○まとめ

 こういう、ろくでもない記事を載せてしまうのは問題である。なぜなら、東京のパレードを、また一から再興できるかどうか、これから積み上げてゆかねばならないことが、たくさんあるというのに、マイナスイメージだけが無検証に流布され、一人歩きをしてしまうことで、再び成るべきものも、成らなくなってしまう恐れがあるからだ。

 悪意があったとまでは疑いたくない。単に、担当記者が、きちんとチェックしなかったのだと思いたい。

 それにしても、デマによって失った信頼を取り戻すには、やはり記事の記載内容について訂正を打つなど、迅速で適切な行動を求めるしかない。 

 扶桑社には、猛省とともに、善意ある対応を促したい。


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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
あくまでここに書き込むことは私個人の意見であって、私が関わっている地方のパレード団体の意見でないことをご理解ください。

私は7月の東京プライドの臨時総会を参加させていただきました。
理事をはじめ、総会に参加されている方はこの業界では名の知れた人たちばかり。その面々に圧倒されていたのですが、総会の内容はまったくもって理解不能でした。

組織として多額の繰越金がありながら何故パレードが出来ないのか?東京がパレードできないことで地方のパレードへのしわ寄せや日本全体のゲイムーブメントの士気の低下を総会に来ている人は感じているのか?優秀な人たちが集まって何故パレードが出来る方法を模索できなかったのか?総会に参加している女性の数が圧倒的に少なすぎることへの違和感・・・。

本当にこの人たちパレードしたいのかな?実は自己顕示欲を発揮したいだけ?と何か不信感だけを感じながら東京を後にしました。

みっち
2008/09/04 01:40
ごめんなさい、上記の続きを書かせてください。

そしてその後の東京プライドの備品の売り立て・・・個人的意見ですが、会員に売るより地方のパレード団体等に「備品お譲りしましょうか?」ぐらいのこと言えないのかと。
地方のパレード団体は「ポスト東京ブライドパレード」を常に意識して運営していると思います。それぐらい東京って大切なモデルケースだったと思います。
せめてお休みをするなら、地方のパレードを応援するぐらいの気持ちを見せて欲しかったなと思っています。

まだSPAの記事読んでいませんが、東京プライドに関しては外部の人間にはほぼ理解不能なところに行ってしまった気がします。

私は今はただ自分の地元のパレードが出来るだけ長く続くことを願うだけです。
みっち
2008/09/04 01:41
>みっちさん

 僕がこれから書くことも、東京プライドの見解を代弁するものではなく、僕が感じている私見に過ぎません。学んだことも含まれています。
 諸外国のパレードと比較したら豆粒ほどでも、東京のパレードは巨大です。首都であることから警察サイドの対応も厳しいのでしょう。開催場所は、いまや世界の渋谷・原宿。いろいろな意味で、安全が最優先なのは当然のこと。想像以上に周到な準備が必要です。資金の問題でもなく。また、やる気だけで処理できるキャパを、もはや超えているのでしょう。
 錚々たる顔ぶれとて、パレードのプロは一人もいません。これまで経験によって培ってきた方法論を駆使しながらも、手探りは続くのです。総会では、それらの子細を説き聞かせられるだけの時間がなかったはずです。↓↓↓
円山てのる
2008/09/04 09:17
 東京の事態は極めて残念です。断腸の思いで中止は決断されたと想われます。さまざまな余波も重々承知の上で。そして、誰もがパレードを開催したいとの強い意志を持ってきたはずです。本当はやりたくないのに、あれだけの難題に取り組もうとしたわけがありません。
 東京プライドの備品類については、きっと地方の諸団体への譲渡なども視野に入れておられるはずです。ただ、再建を検討していることもあり、慎重にベターな対処を思案しているのでしょう。東京では二度とやらないと決めたわけではないのですから。
 なにも、焦ってことを始末しなくても良いではありませんか。時間を差し上げようではありませんか。―――と、僕は、そう考えているのです。
円山てのる
2008/09/04 09:18
 いつも丁寧に東京のパレードのことを説明してくださり、ありがたいです。
 さて、SPA!の担当記者と電話で話せました。記事の印象とは違って、まともそうな、良い感じの人でした(なのに、こういう記事をつくっちゃうのね…)。
 丁寧に説明したら、問題があることを認めてくれました。とりあえず、資料を送ったりもしながら、こちらのパレードのことや、LGBTのことについて、知ってもらうようやりとりをしていくつもりです。
 まぁ、もしかしたら、デモをやるということに(ちょっと浅めながらも)関心を持ち、その中でゲイをとりあげるということは、LGBTのことについても、ちゃんと説明すればわかる可能性がある人ということなのかもしれないですね。
 
すなひで
2008/09/05 12:48
>すなひでさん
 担当記者さんが、素直に問題を認めたとは、何よりですね。すなひでさんの、冷静で知的説得力のある円やかな低音の魅力に、記者さんは、すっかりやられてしまったに違いありません(^^)
 人間は、不完全な存在です。LGBTも異性愛者も、どっちもどっち、ドングリ人間の背比べ。
 誤りがあったとき、いたずらに相手を非難し、正義大義を掲げて圧倒するのではなく、ときに辛抱強く説明するうち、仰るように、相手は案外、善意ある理解者へと大化けして下さることも有り得ましょう。
 災い転じて何とやら。訂正記事どころか、パレード再建へ向けての熱い応援記事を書いてくれるようにまで担当記者さんの意識が変化したら、とても素敵なことですね。
 すなひでさんの、信念みちあふれる行動に、深く敬意を表します。
円山てのる
2008/09/05 22:50
>パレード再建へ向けての熱い応援記事を書いてくれるようにまで担当記者さんの意識が変化したら、とても素敵なことですね。

SPA!といえば、忘れもしない去年の統一地方選前、「セクシュアル・マイノリティ候補」の特集記事を載せた雑誌です。つまり、それくらい「LGBTフレンドリー」だったのです。

そのときと担当記者が同じかどうか知りませんが、雑誌全体でみる限り、「(意識が)悪化した」というべきなのです。

さて、その記事についてですけど、東京プライド内部の事情に通じていない私にとっては、真偽のほどはコメントしかねるのですが、一点だけ以下の部分について、

>その主催団体が社民党と繋がっているという話があって

まず、この文章は「話があって」という「伝聞」になっています。この話し手が断言したわけではなく、そもそも信頼性が低いと言わざるをえません。

それを前提としても、プライドにおいて、そういう噂を立てられても仕方ない、一部政治家への「優遇」というか、「特別扱い」が見られたと、私は思いますよ。

つづく

2008/09/19 23:49
つづき

言うまでもありませんが、LGBTと一言で言っても、彼らの政治的ポジションは様々なのだから、全LGBTの祭典を名乗る以上は、全当事者が参加できるように、パレードは政治的中立性を保つように細心の注意を払わねばなりません。

しかるに、東京プライド主催者には、その点に対する配慮が足りなかったのではないか。一部政党や政治家に肩入れをしていなくても、してるように「見えた」ことが、今回、中止に至った原因の一つではないかと感じています。

結論としては、事実でない記事について抗議するのは当然だとしても、それだけに終わらせることなく、LGBTフレンドリー(だった)雑誌にこう書かれたことを謙虚に受け止め、反省することも必要ではないでしょうか。
m
2008/09/19 23:53
特定の政治家を優遇したのだから
自業自得ですよ
自業自得
2008/09/20 03:06
 mさん。「東京プライド内部の事情に通じていない私にとっては、真偽のほどはコメントしかねる」と仰るのなら、「一部政治家への『優遇』というか、『特別扱い』が見られた」とか、「東京プライドには、パレードが政治的中立性を保つように細心の注意を払うべき配慮が足りなかった」とコメントできるのは、どうしてなのでしょうか? 事実を確認をなさった上で書かれたのか、それとも推測とか印象に基づいて書かれたのか。もし、推測や印象だけで批判をされているとするなら、一度、考え直されたほうが良いと思います。なぜなら、推測や印象だけの批判は、何ら説得力を持たないからです。
 私は、旧東京プライドの会員として、理事を務められていた方などからもお話を伺っております。ジャーナリズムの倫理に関わりますので、ソースを明かすことはできませんが。
円山てのる
2008/09/20 11:49
 自業自得さん。貴方へのレスポンスは、mさんへのものに兼ねます。
円山てのる
2008/09/20 11:49

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