てのる【Gay】タイムズ

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 【ゲイ小説】 幽霊香盤表 第14幕 (全17幕)

<<   作成日時 : 2008/05/07 06:24   >>

ガッツ(がんばれ!) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

画像

  ◆◆幽霊香盤表<第13幕>からの、つづき◆◆

 天衛学院高校の公認課外活動である――天衛・ダンシング・クラブ(TDC)は、東京中央テレビが、連邦ネットTVジャパンと組んで、この春先に企画・放映した「ニッポン・高校生・レッツ・ダンス・グランプリ」で、見事に銅メダルを獲得していたのだ。
 とき当代に至るも、相変わらず衰えることなく続いているヒップホップ人気も手伝って、以来、TDCは恰好のエンターテインメント・ネタとして、テレビの芸能ヴァラエティーショーを中心に、ネットでケータイで、そして写真誌で取り上げられている。要は、活発にスタイル良く踊る美形の高校生男子を映し出し、公開し、また記事にしておきさえすれば、カッコカワイイもしくはヤンキーカワイイ――ヤンカワだと騒がれ、視聴率やアクセスカウントをたんまりと稼ぎ、売り上げ部数を伸ばすことができたのだ。
 TDCのボスの座にある勇気も、それに、常にダンスパフォーマンスのトップポジションに立つ、運動神経抜群のカズオという少年も、すでにスターダムを獲得しているようなものだった。筋金の入った“熱病ファン”から見れば――だが。
「舞台のクライマックスで、目玉になるようなファクターを探していたら、偶然にさあ……」
 TDCの、全身がバネで出来ているような少年たちを前にして、諏訪が稽古を付けている。この日は、芝居のエンディング部分を作ろうと、彼らの他、雄介と健二が日影ビル三階の稽古場へ顔を揃えていた。全員、まちまちで色取り取りの夏用トレーニングウエアを着ている。貧乏劇団員たちが着る、ボロ布のように擦り切れたスウェットや、絵柄がすっかり色落ちし、襟元がクタクタになったTシャツなどと比べて、TDCメンバーのものは圧倒的に上質で、しかもファッショナブルな稽古着だ。きっと、パドゥーマやヴェルト・トリブヴァンなどのヤングブランドグッズに違いない。
「……雄介くんが在籍している天衛高校の名前から、検索に引っ掛かってくれたんだ。さもなきゃ、気付かないで、いまもまだ頭を抱えてたかも知れない。……幕が開くのが、三日後だってのに」
 雄介にしたところで、学校へ行くのを拒否していたのは、クラスメイトたちとのあいだに確執があったからではなかった。友達とは仲良くもしたかった。しかし、学校を離れてしまったことで、自分のほうから疎外感を作り出し、自然に、友達とも距離を置いてしまう結果になった――と、それだけのことだった。しかし、友達を自ら切り捨ててしまったとの後ろめたさは、なかなか簡単に消えてくれないものだった。
「思い切って、先週の初め、校長先生に直訴してみたんだよ。俺が直接、成城のお宅を訪ねてさ、
『お宅の生徒を貸していただけませんか』……って。そうしたら、たまたま校長先生の奥さんが、俺が主演してる――刑事・新田謙吉シリーズの大ファンでいらしてさ。奥さんが卒倒しそうになって、
『まー! 諏訪宙太郎のモノホンが来たわ!』……なんて、年甲斐もない黄色い声で叫んじゃって、気持ち悪かったけど、ラッキーだったよ。
『新田刑事の脅しを聞かないで無視すると、相手は大抵、ゆくゆく酷い災難を被りますからな――ドラマの中では』……そう、校長先生には、軽い皮肉まで言われちゃったけど、学校も夏休み期間中だから、良いだろうとおっしゃって下さって。特別に、きみたちの“使用許可”を頂くことができたんだ」
 榊守の家督を継いで、巌榊大神宮の聖皇などという形式張った神官職に就くことが性に合わなかったこと、自分が民籍上、両親とされている父母の子ではなく、母と母の従兄弟とのあいだにできた――政略的・インチキ・嫡子であること、そして何にも増して、自分がゲイであるからこそ、そのように、将来、否が応でも直系の子孫を残さなくてはならない生きざまなど、到底、受け入れられる筈がないこと、――これらが榊守の家を拒絶し、それゆえ親の言うことには何にも従いたくない、だから学校にも行かない、――と連なる、雄介の不服従行動を導いた根本原因なのだ。
 TDCを今度の芝居に客演させようとのアイディアに関連して、諏訪から、何の相談も受けていなかったことで、
(ちっ! そうならそうと、先に言ってくれよな!)何事にもまず反抗が基本の雄介は、意識して天の邪鬼な態度をとっていた。それが、難しい年頃と言われる所以だと、我輩は想う。しかし、
「時間が無いからね、ダンスの振り付けやら音楽は、全部、きみたち“専門家”にお任せするよ」諏訪のほうは大人で、ちっとも雄介の仕掛けに動じない。どんどんとプロセスを進めるのであった。
「ヒューッ! オレっら専門家だってよー。堅っ苦しい呼びかただぜ!」
 そして何よりも、雄介は、自分のクラスメイト――勇気の能動的なヴァイタリティーに圧倒され、そして傾倒し掛かっている。この土壇場へ来て、幾ら卑屈モードを自己演出しようとしても、実のところ、もともと雄介は、今度の挑戦に、
(ようし、なら、やったろか!)闘志と熱情があったのだ。ウズウズしてきて、天の邪鬼など、長続きしなかった。
 同じくヤンキー上がりの諏訪――しかしいまでは一流俳優――、その、どうしようもなかった過去を演じる“光栄”に浴しているからだ。そのことを見透している諏訪から説明されてあったのか、兎にも角にも「マブダチ」の勇気たちは、強引に、雄介を今回の芝居へ引き戻そうと試みたのである。
「ただし、ダンス・パフォーマンスが入れられる時間は、長くても10分だね。芝居のラストだよ。……で、出番は、ユウスケときみら――沼上高校の元・ヤンキー生徒たちが、いよいよ『オール・ジャパン・ダンシング・フェスティバル』に挑む前日の場面と、それから当日――決戦の舞台、その晴れ姿だ。出る場面は計二つ。いいですか?」諏訪は、香盤表をヘンプ地の“ずた袋”へと突っ込んだ。
“オッケー”
“超・楽勝なんっすけどー”
“踊るだけで、いーわけー?”
「おお! いい質問だ。それなんだけど、ダンシング・フェスティバルの前日の場面で、何人かに簡単な台詞を喋ってもらうよ。いまみたいな、普段通りの調子で構わないんだ。……よし。……じゃあね、それを、これからちょびっとだけ口立てする。いいか?」
“やべえ。ダレがダレが?
“誰が演んの、それってー?”
“はっずかしいじゃーん?”
“勇気、お前やれよ!”
「オレっ、できっかな?」勇気が、鼻の下を人差し指の腹で左右に擦っている。
「できるさ。あれだけ、もの凄いダンスができて、こんな簡単な台詞が言えないわけがないさ。一言だ。……『ひゅーひゅーっ! ユウスケとケンジってー、何かさー、お似合いの二人だよねーっ!』……以上。喋ってみて!」
「え? いま?」
「いまさ!」
「ええっと、……」
「ひゅーひゅーって冷やかして戯ける声からだ」
「えとー、……『イエイ、イエー!』 ……でも、いいの?」
「いいぞ!」
『イエィ、イエーイ……』
「そうだ!」
『……ユウスケとケンジって、何だかよー、お似合いの二人って感じだよねーっ! そうじゃねー?』
「バッチリだな。それで、一丁上がりだ。……よし。じゃ、そこ。ユウスケの台詞と合わせてみてくれ……」
 雄介は、いまだ天の邪鬼を装っているのだが、
(こいつは大丈夫。一度は走って出て行ったが、案の定、すぐに稽古に戻ってきたんだし、こうして学校の友達まで応援に駆り出したんだから……)諏訪の目に、そのイヤイヤ振りは、文字通り“振りをしているだけ”だと看破されていた。
「さあ、雄介。演ってくれ」
 稽古舞台の、ど真ん中に立った雄介が、装っていた膨れっ面を一旦緩め、
『……いよいよ、これで最後の練習も終わりってことでー、ホントに何かー、胸が……、一杯……です。スワ先生っ! 心から、ありがとうって……言います。それから、ケンジ……。……オマエ、いつも一緒にいてくれてサンキューな……』
 級友たちへ“どうだ”と見せ付けるように、ここまで諏訪のもとで修練し、姿形良く磨いた演技の力量を示した。
「そこで、勇気くんが入ります。ハイッ!」
 雄介の気概を感じると、
『イエー、イエーィ! 何だかよー、……』初体験の勇気も、何くそ負けじと意気込んで食らい付く。
 ヒップホップダンサーとは言え、さすがはステージ・パフォーマーらしい練られた芝居をするのである。
『……ユウスケとケンジって、かなりさー、モロお似合いの二人って感じじゃねーっ! なあ、みんな?』
 アドリブまで決めてしまうなど、大したものだと、諏訪は感心も安心もしたのだが、
「おっと。そこの『なあ、みんな』は、まずいぜ。次のユウスケの台詞が控えてるから。それと、みんなが歓声を上げるのは、そのあとになるからな! ……」若干の勇み足を修正すると、
「……ハイ、雄介くん、次へ進んで!」芝居の続行を促した。
 雄介は、間髪を入れず、
『うるせえっ! バーカ! ……』一言、正確に台詞を入れ、
「ここで、みんなが、混ぜ返しの声を上げる! 一斉に、アツアツでイイ感じのユウスケとケンジを冷やかすんだ。好きなように演っていいぞ。ハイッ!」改めて諏訪が指示を飛ばした。息が合って来て、稽古は、たいぶ良いテンポになってきた。
“フォー、フォーッ”
“ケンジ、愛してるー、だろっ”
“言っちゃえよーっ!”
 一同に紛れて立つ健二は、これは芝居だし、稽古だと言うのに、丸々とした両手の指を絡めたり外したりして、モジモジと落ち着かず、大福餅のような顔を完熟トマトのように染めている。これは、諏訪の演出には――無かったのだが。
『……えっとー。そんじゃー、いよいよホントのホントでー、マジなんでー、遂にオール・ジャパン・ダンシング・フェスティバルの本番が明日……っていうことでー。みんな、勝負のときが来ましたみたいな感じなんでー。あしたはビッとしてー、気合い全開で頑張って下さいっ! ……』雄介が、ビシッと決めた。
「……ヨウッシ! そういう感じだ。オッケーオッケー。……で、このあとすぐ暗転にして、速攻でダンシングのステージへ変えるからね。……ね? 勇気くん、いいですか? すぐ音楽を入れて雰囲気をガラッと一変させたいから、アタマっからガツンと盛り上がる曲を用意してよ。……決まったら、なるべく早く教えて! 音響さんと打ち合わせするから。いいかい?」
「おーっす! 任しとけって。これってさー。スゲー、面白くなりそーじゃねー?」勇気は、童心に回帰したと見える。
 たぶん、小学生時代もそうだったであろう弾け飛びそうなビッグスマイルを復活させ、数回、思い切りシャープにジャンプした。照れ隠しも入っていたに相違ない。我輩が想うに、こうした小生意気さの中から垣間見える、ヤンチャな腕白振りこそが、この年頃の少年たちだけが放つ、貴重な魅力なのである。
 諏訪は、モンゴル相撲体型から噴き出し続ける大汗を、バスタオルで心地良さげに拭いながら、
(決まってるじゃないか。面白くするんだよ。きみたちの人生も、知らない誰かの人生も。……そう、この俺のだって)
 三日後には、どうにか幕が開けられそうな、わくわくする手応えを感じていた。
 稽古場の天井にペタリと張り付いて、ずっと様子を眺めていた純白マッチョマン幽霊くんが、大層、感じ入ったようで、
{(よーしよし。いい傾向だねえ)}
 満足そうな頷きを、しきりに繰り返していた。

  ◆幽霊香盤表<第15幕>へ、つづく◆

クリックプリーズ
にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛(ノンアダルト)へ

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ガッツ(がんばれ!)

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

MAIL to TENORU

↓コメント欄にもお名前を↓

サーチエンジン

GIX

ブログリーダー

blogram投票ボタン にほんブログ村 恋愛ブログ 同性愛・ゲイ(ノンアダルト)へ
ゲイのブログ検索サイト - ゲイログ

ネット・コム


GLBT・情報



GLBT・パレード

【ゲイ小説】 幽霊香盤表 第14幕 (全17幕) てのる【Gay】タイムズ/BIGLOBEウェブリブログ