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help リーダーに追加 RSS 【ゲイ小説】 幽霊香盤表 第16幕 (全17幕)

<<   作成日時 : 2008/05/17 05:16   >>

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  ◆◆幽霊香盤表<第15幕>からの、つづき◆◆

 八月。――最後の日曜日を迎えた。
 東京首都州そして夢彩思州では、渇水に悩まされていた七月から一転し、この八月後半に入ると、夕方を中心に爆発的な雷雨が北関東郡の長野、群馬、栃木、茨城など各府に跨る主要水源地帯を襲うことが続いた。ときとして、局地的に、最大雨量が一時間当たりで288ミリと、まこと尋常ではないほどに、もの凄く。バケツどころではない。プールをひっくり返したような超・大猛雨だった。
 そのため、山間地域では、ひと山が丸々潰れて押し流されてしまったほどの、酷い集中豪雨災害もまた、発生したのだが、反面、水不足は一挙に解消した。
 大渇水から激烈な爆雨へ。
 我輩が想うに、この夏の天候という奴は、財部藤六代表の、とてもとても不愉快な大激怒と同様に、常軌を逸した発狂振りだった。
 代々木公園中央広場では、連邦制導入以来――疾うに名物となっている、州政移管記念・大江戸銀杏モニュメント、その直径四十メートルにも及ぶ、パワフルな円形噴水アクロバットプレイが復活していたのである。
 バランス良く鍛えられたマッスル自慢の新鮮なスベスベボディーが数十個体、レインボーカラーに彩られた競パン一枚で噴水の池に飛び込み、
“ファーオ”
“ウッフーッ”
 ――と、裏声を駆使した中性的な雄叫びを上げる。芸術品の肉体を、このように惜しげもなく無料で視姦サーヴィスに提供してくれているのは、この日が、他でもない、年に一度の愉快なお祭りだからなのだ。
 そう思っていると、なるほど、
“ウリャ……ウリャ”
“セイヤ……オッリャ”
 こちらは、半纏に捻りハチマキ、半股引に地下足袋、――角刈りや坊主頭でこざっぱりとキメているお祭り野郎たちが、待ちきれずに練習を始めている。どこと、どこと、どこ――の町内会を口説き落として借りてきたのだろうか、これから本物の御輿を三基ほどだか担いで、威勢良く練り歩こうと言うのだ。
 かたや、上半身は真っ黒なTシャツあるいはタンクトップに、下は迷彩色やカーキ色の戦闘ズボンに、靴はピカピカの黒革のブーツに、――と、見るからに鉄の結束で統一している面々が、
“全員、ただちに集合ぉーっ!”
“隊列を組みます。整列位置に集まってーっ!”
 部隊長の命令一下、きびきびとした団体行動に徹している。
 これだけではない。中央広場を覆い尽くして、どこもかしこも、人・人・人なのである。体感気温は40度。それと体温とを掛け合わせた、人間・ごった煮・坩堝の内部世界だ。
 たしかに見せるだけのことはある、ナルシスティックに半裸体の筋肉男ども。この日のためにと自ら裁縫、ぴらぴら金布・銀布のド派手衣裳に身を包んだギャル男くんども。チャーミングに纏めた、水玉ビキニのおニャン子ども。巨乳を専ら強調した、ゴージャス舞踏会ドレスの淑女系ども。いっぽうで、ごく普通に――いつもの服装で何ら不満の無い者ども。はたまた、アメフトのユニフォーム、完全防備の肉弾ども。ちょんまげカツラまで被った、マワシ一丁姿のごっつぁんレスラーども。団扇片手に浴衣で草履、セクシーうなじとトンボのかんざしがワンポイントの町人娘ども。
 ――それらの、ほとんど100%が、レズビアンやゲイ、そしてバイセクシュアル、トランスジェンダーと称される、同じ人間の仲間たちだ。
 じりじりと焼け付く真夏の暑さ――。
 いま、パワー120%で鳴いている筈の青春の蝉たち――、機械音の如きその騒がしい声は掻き消されて聞えない。同じように、いま、ここで弾けるしかないと壮麗な大祭典に酔いしれている――この人間たちの息吹と喚声とに、圧倒されてしまっているから。
 そして、嫌でも視界へ映り込むのは、あまたあまた、マーブルチョコレートをばら撒いたように多色多彩なゴム風船。ヘリウムガスで浮かんでいる。その数は無数だ。到底、数え切れない。色・色・色のカクテル――。LGBT・リベレイションのメッセージを掲げたボード。フロートを先導するデコレイテッド・カー。全ては、ミキシング中のフルーツジュース――。浮かれている膨大な量の、感覚だけになった魂たちが、その只中を、いま泳ぎ始めている。
「良かったぁー。今日は、快晴になったよねー。……だけど、暑っちー! ゲロあっぢーぜー」
「台風が、ぎりぎりんとこで逸れてくれやがったからねえ。南からの湿った空気がもろに入えっててえヤツでえ、……っとっとー」
 背中から突き飛ばされたから反射的に振り向いた。
“ちょっと、あたしのチャウ坊、けっ飛ばさないでくれるっ! ……おお、カワイソ可愛そうにー、痛かったー?”
 斯くも巨大な催しに、わざわざ生身の愛犬など連れてくるほうが悪いのだが、
“気を付けなさいよねっ!”
 ドラアグなパープル系・蝶々夫人に難癖を付けられた側の、ラガーシャツを着ている短髪マッチョなヲネエさまも、
“あーら、ごっめんなさーいねーっ!”謝する言葉とは裏腹に、
“地面の色と同じ犬なのね。保護色になってるんだわ。気が付かなかったわけよね”
 慇懃無礼に睨み返していた。
 立錐の余地もない、もの凄い人だかりなのである。
「どのぐらい、集まってるんだろ?」
「そうさねえ。ざっとー、……二万ぐれえってとこだろうかねえ」
「よく判るね? これだけの人数を」
「へっへ。だってよ、毎年そのぐれえの数なんだもん」
 ボランティア・スタッフたちは全員、レモンイエロー地に、赤・橙・緑・青の『POT・LGBT』共通ロゴマークとレインボーカラーの紅茶ポット――が染められた、公式Tシャツを揃って着用している。そして、背中に大きく、インパクトのある書体で『STAFF』と入っているのだ。ジーンズやら短パンやら、下は自由と見える。参加者たちの交通整理に、目下、大わらわの様子だ。
“きつくて済みませんが、えー、一列、十人で並んで下さい”
“混み合っております。ご協力、お願いしまーっすー”
 ――みんな大汗状態で、頑張る。
 この、POT・LGBTのロゴは、もちろんこの催し――パレード・オヴ・東京・レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・フェスティバルを表わしているのだが、このロゴを使い始めて何年目になるのだろう。もはや、すっかり定着している。POT・LGBTのロゴとレインボー・ポットは、ムーヴメントのシンボルマークと化している。
 催しのPRも兼ね、連邦レヴェルで事前に記念Tシャツが販売されており、こちらのほうは地色が深めのグリーンで、ロゴの緑文字が黄色に入れ替わる。背中には、虹色のハートマークが入るものの他、ベア・フラッグやレッド・リボンが染められているヴァージョンもあるようだ。
 雄介も健二も、下半身に穿いているものは、ぞれぞれブルーのバスケパンツ、むりやり半裁にしたジーパン、――とマチマチなのだが、上は、今日のためにと仲睦まじく一緒に購入した、POT・LGBTの記念Tシャツを着ている。
「時間、押してねえ? まだ、パレード始まらないの?」雄介の背中にはベア・フラッグで、
「早くしねえとさ、このままじゃ、熱射病で、ぶっ倒れる人間が出ちまうんじゃねえのかねえ」健二のほうは、虹色のハートマークである。二人とも、せっかくのペア・ウエアが、汗でぐしょ濡れだ。
 さて、我輩が敢えて申すまでもなく、雄介と健二は、十日前の劇団鰻登公演・千穐楽のハプニングが切っ掛けで、めでたく付き合い始めることになった。誕生したての、我らが愛しきゲイ・カップルは、あの舞台の上で約束した通り、最初のデート・イヴェントとして、これから出発するLGBT・パレードに参加しようとしているのだ。若い二人なればこそ、熱狂した夏の火傷しそうな祭典がメモリアル・デートに相応しい。
「なあ、オレ、決心付いたよ。健二って、知恵があるよな。教えて貰わなかったら、オレなんか、一生、まともになれなかったかもしんないぜ」
「知恵ってか、一般常識なんだぜ。雄介……おめえも、ニュースを見ろよ。世界中を驚かせた一大ニュースになったんだぜえ。美子天皇の後継問題ってヤツな。いいか……。一旦は、皇室財団理事会ってえとこがな、天皇の従兄弟に位を継がせることに決めたわけだあな、ところがだ……」
“イエー、イエー”
“ひゃっほうっー!”
“カッキーわあーっ!”
 メインステージ上にうち揃った、純白コスチュームのトランペット隊が、
 ♪――パパパパーパ パパパパーパ パパパッパパーパーー
 ♪――パラパパパラパパパ パラパパパパー
 高らかにパレード出発式の開式ファンファーレを奏で始めている。
 ♪――パッパ パララ パララ パーーーー!
“ステキー、堪らない感動ぉーっ!”
“もうっ! おしっこチビりそうー”
“ギャーッ!”
 大歓声で、二人の会話が揉みくちゃにされてしまっているから、ここで我輩が、別途解説を加えておこう。
 一度は、天皇美子陛下の後継に、露草宮恵仁殿下・麻子妃殿下夫妻の長男、――つまり、彼女の従兄弟である昌仁という男が決まった。ナショナリストたちは、これで、男系男子の皇統維持という日本皇室の連綿たる伝統を断絶させないで済むと叫び、嬉々躍々としたものだったが、話はそう簡単には進まなかった。決定などと言われたが、あくまで皇室財団理事会の判断に過ぎなかった。本人の、人間としての意思が、全く無視されていたのだ。その後、渦中の人――昌仁氏自身が、熟慮の末、会見を設け、
『わたくしは、皆様のご期待に添うことはできません。天皇の位を継ぐのに、わたくしは相応しい者ではありません。何故なら、わたくしは……同性を……愛することを指向する、そのような性に生まれ付いているからなのでございます……』と表明し、世界史上まさに前代未聞、インペリアル・ゲイ・カミングアウト――との大珍事になったからなのだ。
 守旧勢力は茫然自失となったあと大混乱を呈したが、世論は、勇気を以て自らのゲイネスを明らかにした昌仁氏を賞賛し、
“ヴィヴァ! 昌仁、マーサヒトッ!”
“よしこ天皇、バンザーイ!”
“皇位は、美子さんの息子――ノリヒトさんのものよーっ!”
 LGBTサイドも、この報せを快挙だと捉え、ときまさに、こうしてパレード・イヴェントでも、この話題が一層の大フィーヴァーをもたらしている――と、そんなタイミングなのであった。
「……だから、ほら、みんな昌仁すげえって、褒め称えているだろう? な? 雄介の場合と同じようなもんじゃねえか」
「うん! 理解理解! オレ、弟に巌榊大神宮の聖皇の位を“ジョウト”すればいいんだよね? ……ん? “ジョウヨ”だっけ?」
「違うだろって。譲位だぜ、ジョウイ……。間違えんなよ、雄介!」
 炎天、まさに燃えるような暑さ――。
 健二が言った通り、中央広場には、二万数千人にまで膨れ上がったパレード参加者たちが集結している。太陽は、核融合の容赦ない灼熱のエナジーを、賑やかな色彩を撒き散らす大群衆の上へ、一切を焼き尽くさんとばかりに放散している。
 メインステージに近い、前のほうに陣取った人々の中から、
“おや? ……”
“あららー、あれって……”
“お? おおーっ?”
 想定外な空気を漂わせた、どよめきが上がると、
「えー、えーとですね、あー、皆さん……」
 ステージ上でオープニング・セレモニーを仕切っていた司会者の戸惑った声が、やっぱりクエスチョンマーク付きになっている。
「……予定に無かったゲストのご登場ということになったようですねー。……ハイ、えー。いまですねー、最前列のほうから、いきなりステージに上がっても良いかとお尋ねがありまして、どなたなのか……と、確認しましたところ……ですね……あらら」
 ステージに設えた階段から、一人の男性の姿――。雄介と健二も着ているのと同じ、グリーン地の公式・POT・LGBT・Tシャツを纏って、ヘンプ地の、くたびれた“ずた袋”を、たすき掛けにしている肥満中年男が、
「ごめんねーっ! アポ無しの押し掛けでもって、図々しく上がっちゃって……。迷惑してるよね? わりいわりい」申し訳けなさそうな口振りをする割りには、ズカズカと登壇してしまった。
「迷惑……? はあ……、たしかに……、いえ、まあ……、それほどでも……」と、司会者が、もはや他に為す術もなく、
「……こちら、お顔を見れば、もう、ご紹介するまでもありませんよねー? じゃあ……、ど、どうぞ……、一言、お集まりの皆さんに、ご挨拶を頂戴しましょう……か?」持っていたマイクロフォンを、中年男に手渡した。
 拍手と笑い声の混じった驚きの歓声が、ステージから、じわじわと代々木公園中央広場一帯へ拡がり始めた。肥満男は、2リットル・ペットボトルの烏龍茶を、グビグビとラッパ飲みすると、すこぶる元気良く話し始めたのだ。
「……こんにちはー、皆さーん! とっつぜん、お邪魔しました。すみませーん。諏訪宙太郎でーす!……」両の頬に、でっかくレインボーフラッグのペインティングを施している。顔面が、ほぼ正方形だからこそ可能だったようだ。
「……えとー、十八回目だっけ? えー、……第十八回、パレード・オヴ・東京・レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・フェスティバルの……、ふー、長げえ名前……、えー、開催おめでとうございまーす。俺はー、これまで、こういうイヴェントごとには全く無縁だったんだけどー、今回は、これから始まる東京プライドマーチに、堂々と参加してー、みんなと一緒に、一人のゲイとしてー、歩かさせて頂こうと思いまーす。今日からねー、俺、生まれ変わろうとしてるんだけどー、大事なこと、言っときたいんでーす。俺が、初めっからゲイとしてー、この世に生を受けたっていうことー、自分で、はっきり判るんでーす。後付けの趣味なんかじゃなくてー、もともと人間としてー、ゲイという性であることー、生まれながらー、男なんだけど男が好きで、男に恋して、男に性欲を感じて、男と結ばれて添い遂げたいって思ってることー、まだー、誰にも話したことありませんでしたー。今日もー、うちのおふくろにもー、あと、マネージャーにさえも何も言わずにー、ちょっと出掛けてくるよーって、出て来ましたー。誰にも相談も何も一切してませーん。生まれて初めてのカミングアウトを、いまー、ここでこうしてやってまーす……」
“えーっ! すげえすげえ”
“諏訪宙太郎が、ゲイだってー”
 二万人規模のLGBTたちが、怒濤のような祝福のオヴェイションを送った。
“カックイーっ! 諏訪ちゃーん!”
“やるじゃなーい! 可愛いわー”
「……ありがとう! どうも、ありがとう。……えー、実は、つい先日、ハネた芝居があったんですがー、共演してくれた、男子高校生と二十歳になる役者志望の男の子とが、舞台の上で――本番のですよ、それもアドリブで、
『好きだー!』って告白し合うハプニングがありまして。それで、俺も決めたんでーす。俺――、今年で四十五歳になるんですがー、もう逃げも隠れもできない中年オジサンなんですけどー、遅蒔きの……、えー、超・遅蒔きのカミングアウトしようって。彼ら、若い十代、二十代の躊躇わない感覚の新しさって言うのかな……、そういうのに強烈な刺激を受けましてー、もともとは、こっちが人生を教えてやるぜ……みたいなつもりで演出した芝居だったんですけどー、実際は、逆さまに俺のほうが完璧にやられちゃってー、目の覚める思いを経験しましてー、それでー、今日はここへ来ました! 見事に、やられたーっ……。教えられちゃいましたよー。
『ホモだ、オカマだ、――というレッテルを、自分らしくあるための――エンブレムに変えちゃうんだ!』ってね。……えー、これからはー、ゲイが主役のドラマとか芝居とかをー、どーんどん……、演りたいと思ってまーす。……オーイ! 雄介くんに健二くーん、来てるかーっ? 居たら、このあとで会おうなー、どっかでな……、おーい。……とても人が多すぎて、いまここからじゃ、あいつらが居るのかどうかなんて、分かんないし見付からないですが……」
 雄介と健二が居る位置からは、
“オーイ! 諏訪さーん! ここだよ、ここー”
“こっち、見てちょーっ!”
 怒鳴って存在をアピールしているのに、ステージはあまりに遠くて気が付きそうもない。
「……勝手に喋くっちゃっててごめんね。……ってことなんでー、今日は一日中、みんなで盛大にやりましょうっ! 一緒にー、愉しみたいと思いまーす。……ホントにどうもー、飛び入りなのにー、ご静聴ありがとうー。そいじゃー、宜しくお願いしまーす!」
 やや感激気味の司会者が、
「みんなでー、勇気ある諏訪宙太郎さんに、どうか、惜しみない拍手を差し上げましょうー。んー、ビッグなハプニングでした。ありがとうございましたー。……えー、びっくりしましたけど、マジで、諏訪さんがこっちの人……ゲイでしたーなんて、これって、今日のトップ項目のエンタメ・ニュースになるでしょうねー……」
 ――と、汗だくになって戯けていた。
「……いま、ステージの目の前で、プレスの人たちがスッタモンダのパニックになってますね……」
 降って湧いた超・特ダネをものにして、鼻息を荒くしている記者たちに、諏訪は早速、取り囲まれ、質問攻めに遭っている。記者たちは、LGBT・パレードの取材など、どうせ通り一遍の記事で済むような、やっつけ仕事だとハナから決めて掛かっていたので、その興奮たるや酷いものだ。
 諏訪の飛び入りハプニングを何とか仕切り抜け、
「ハイ! さあ! それでは、いよいよ、パレードのスタートになりまーす! これから、ここ代々木公園を出発しまして、神宮橋、神宮前交差点、それから左折して明治通りを北へ北へと行進して参りまーす。千駄ヶ谷、代々木、新宿駅南口、新宿三丁目から新宿通りには……入らないで、真っ直ぐ五丁目東交差点、そして、ぼくたちの聖地――二丁目・仲通りアヴェニューをドドーッと通り抜けまして、最終ゴール地点は、新宿御苑でーす。コースは、例年――いつもの通りでーすねー。……さあ、それでは、各フロート、スタンバイは……、よっろしいでしょうっかー? ……」イヴェントを最高潮へと誘った。
 二万人が、歓呼で“イエス!”と応えた。
 雄介、健二の周辺では、
“準備オッケーでーす!”
“とっくに出来てるんですけどー”
 おおよそ、このようなレスポンスが飛び交っていた。
“人いきれで苦しいぞー。早く出ないと、息が詰まるー”
“はらへっちゃったー”
「……ではー。マーチングバンド! あとは全てをお任せしましたー。行ってらっしゃいまーせーっ!」
“おら、司会者! ミセコのバイトじゃねーんだぜー”
“はーい! じゃねー。行ってくるわよーっ!”
“押さないでっ! 前が出ないと進めないのよっ!”
 ♪――ザザザザザン タータータタタータ ラタタタラッタ パーン!
 ♪――ラッタタッタ トゥラッタトゥラッタ タッタラッタ タララララッタ……
 レインボーフラッグ・フォーエヴァーは、いまやPOT・LGBTの定番行進曲となっていた。

  ◆幽霊香盤表<最終幕>へ、つづく◆

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