|
女形の歴史は、長いらしい。 ・ 古く16世紀末から17世紀の初めに、出雲阿国(いずもの おくに)がスターになって歌舞伎の原型を作ったと言われ、歌舞伎は後に、女歌舞伎、若衆歌舞伎へと継承されるが、どちらも風紀を乱すとの理由から禁止されたと聞く。 風紀を乱したとなると、女歌舞伎はストリップショー&売春、若衆歌舞伎もゴーゴーバー&ウリセン、といった持て囃されかたをしたのだろう―――と想像はできる。 ・ 女歌舞伎、若衆歌舞伎が禁止されると、歌舞伎は男優だけで構成する野郎歌舞伎のみになって現在へ繋がることとなるのだが、歌舞伎が単なる歌謡ショーやアクロバットショーの次元から、音楽舞踏的演劇へと発展するに連れ、必然、女優の必要性が生じてきた。 ・ しかし、歌舞伎は男優だけとのお沙汰があった。 それならと、男なのに女優に徹する女形が誕生することになった。 ・ このとき、いきなり女形を作り出したと思うのは早計で、実際は、女歌舞伎や若衆歌舞伎で培われた美意識やテクニック、演出などが、野郎歌舞伎の女形形成へと受け継がれてきたと考えたほうが良いとのことだ。 すでに、若衆歌舞伎で、女形の原型は出来上がっていたのだろう。 そして女形の伝統は、近代に入って大衆演劇にももたらされる。 美しい女形は、いつの時代、どの文化圏でも人気絶大だったように想う。 中国の京劇にも日本と同様な女形が存在しているし、インドの古典演劇やギリシャ悲劇にも、女形に近いものがあるのだそうだ。 女形とは異なるが、カストラート(=去勢された男性歌手/去勢することで声変わりすることなく、成長した男性として歌手になったので、女性の高い声域を男性の骨格と肺活量によってパワフルに歌った……)も17〜18世紀のヨーロッパでは高い人気を保っていたのだと言う。 女形の魅力とは何だろう。 おそらく女形を見るとき、言わば両性具有的な神秘観のようなものが、その根底に横たわっていると映るのではないか。 男なのか女なのか、その両方なのか。 漂う妖しさ/不可思議さの中に聖なる何ものかを見出し、ひいては神と出会おうとする本能的な憧れが、人間の心の奥底に潜んでいるのかも知れない。 さもなくば、女形が、洋の東西を問わず、ある時期、人々を一定の熱狂へと導いた理由を解くことができないような気がする。 さらに女形は、あくまで男性が作り出す疑似女性の姿であって、本物の女性と必ずしもイコールではないところに、作品的美意識が加味されると考えられる。 デフォルメされた女性的なるものを、如何に様式の美として具現化するか。そこに演じ手の技量や個性が表出し、観るものを楽しませるのであろう。 外国のことはよく知らないが、現代日本では引き続き、女形を積極的に支持する傾向が残っていると想えるふしがある。 たとえば、劇団<南條隆・一座>の公演が、いま全国で人気を博していると聞く。 <スーパー兄弟>と高らかに銘打って、兄の龍美麗、弟の南條影虎、ともに若い女形として、とりわけ中高年の女性大衆演劇ファンの心をとらえて離さないと紹介される機会が多いのだ。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~ongeisya/n-t1.html ※龍美麗 兄の龍美麗は、1989年8月3日生まれの18歳。そして、弟の南條影虎は、1990年11月27日生まれの17歳である。 ※南條影虎 舞台を離れ、すっぴんに戻ったこの兄弟も、きっと大層な美男子に相違ない。イケメンが女装をして、妖艶な撓い(しない)をつければ、それはそれは麗しい美貌を放つものだろうから。 かつてのカストラートが、女のハイトーンと男の肉体的パワーの双方を獲得することで、誰も真似できない絶唱を披露することができ、その神々しさのあまり失神する聴衆の女性もあった―――と伝えられているのと同様に、美男子がもともと湛えている中性的にして力強い魅力を、女装する/させることによって増幅させ、彼/彼らを観る多くの人たちが、ときに男女を問わず、うっとりと息を呑む結果になるのだろうと想われる。 まさに、古く若衆歌舞伎の女形とは斯くなるものだったのかと、現代なりにイメージさせるものがある。 テレビ・バラエティー番組<学校へ行こう!MAX>のコーナー<女装パラダイス>では毎回、美人男子学生 or ”女装男子”が多数登場して、こちらは主として若い女性ギャラリーたちの黄色い歓声を浴びている。おそらく、高い視聴率を稼ぎ出しているに違いない。 http://www.tbs.co.jp/gakkou/ この番組をいつも視ているわけではないが、僕の知る限り、一見したところ、 「こりゃ、可愛い女の子にしか見えねえや」と恐れ入る”女装男子”たちが、続々と美貌を披露しているようだ。 その折り、本人たちのすっぴん写真も併せて紹介してくれるが、やはり彼らオリジナルの容姿風貌も、それなりの中性美的素地を持っていることが判る。早い話、可愛い男子なのである。だからこそ、<女装パラダイス>に出演する/させられる羽目になるのだろう―――が。 ―――南條隆・一座、スーパー兄弟の二人も、 ―――また女装パラダイスに出演して”可愛い女の子に大変身しちゃう”男子学生たちも、 ―――おそらくヘテロだろう。ゲイではあるまい。 女装するとしても、そのことが短絡的にゲイという性的指向に結び付くことはない。 彼ら女装美人の若い男子たちが、女装の経験を通じて、どのような感想を持ったかを、ぜひ一度くわしく訊いてみたいものである。 女装を通じて、気付かなかった新しい自分、実は気付いていた自分、また、ある種の快楽のようなもの、―――などを感じ取ることは無かったのだろうかと。 もちろん、あくまでも仕事として女形を演じているスーパー兄弟には、さっくりと割り切った心情もあるだろうとは想像できるのだが。 そして何より、若い男の女形に心をとらえられてしまうのも、女装男子に黄色い声援を送るのも、ともに多くは女性であると思しきことは、いったい何を意味しているのかと、僕には興味深い。 そうだった。 いわゆるオネエ・タレントブームを牽引してきたのも、主に女性たちの高い人気だ―――と言われていることにも、何らかの共通した本質が隠れているように感じる。 女性は、女性性を露わにする男性、女性化する男性について、特別な親しみのようなものを抱く傾向があると思う。女性の全員がそうだと申しているわけではないが。 これは、女性が一般ゲイにどのような印象を持つか―――にも、関係してくるはずだ。 もしかすると女性は、ヘテロ男性の一部が即座に、 「ゲイなんて、気持ち悪い」と切り捨て、排除しようとする意識とは全く異なる何かを、持ち合わせておられるのではないだろうか。 いまのところ、僕が女性の知人にカミングアウトした場合、概ね反応が良い。 驚くことは驚いても、その後に引き摺るものが無い。 しばしば、ゲイと積極的に友だち付き合いをする女性たちは、 「ゲイの人たちと一緒にいるときは、安心する」と言うのを、僕は聞く。 安心するとは、身の危険を感じないということかも知れない。一緒にいる男性がヘテロだと、切っ掛けさえあれば、性的に接近してくる危険性はゼロではない。でも、ゲイが一緒にいる分には、そうした恐れがない。よって、安心するのであろう。 いっぽう、男性の友人にカミングアウトすると、彼らは男ゆえ、ゲイの僕に襲われるのではないかと、実にバカバカしい恐怖心を抱く場合がある。 比較的、男性に極端なゲイ嫌いが少なくないのは、そのためだと想う。 女性が、女形や女装男子、そしてオネエ・タレントに好感を持ち、またゲイに安心感を見出すのだとしたら、この際、真っ先にゲイの味方として取り込むべきヘテロは、女性なのではあるまいかと、僕は勝手な意想を抱くに至った。 ―――と言うか、以前から薄々感じていたことではあるのだが。 女性ヘテロをゲイの味方に付ければ、おのずと男性ヘテロも、同意せざるを得なくなるに違いない。 きっと、そうだ。 かなり、楽観的展望というやつだが。 クリックプリーズ
|
| << 前記事(2008/02/23) | トップへ | 後記事(2008/02/27)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
こんにちは、はじめまして。 |
よしな 2008/07/21 01:52 |
ブログの初めに、女形の歴史を読んで、管理人さんが知識のある方だと思い、それもコメントに踏み切る要因でした。 |
よしな2 2008/07/21 01:52 |
>よしなさん |
円山 2008/07/21 05:48 |
(2) 女形も女装も、一般論として括られる「美しさ」で評価されるのでしょう。そこにエロスを感じることができるなら、また違った評価も加わるかとも。いわゆるオカマも本質的に同じだと思うことは、あくまで男性が女性を演じるわけなので、女性らしさとして共通認識されている部分を特に強調するいっぽう、どんどん表現上の無駄を削ぎ落とす必要があろうかと思われます。省略と誇張。デフォルメ。そうしたものを伴うのは、女形や女装を含め、洋の東西を問わないのではないでしょうか。 |
円山 2008/07/21 05:49 |
(3) つまり、オカマも女形も女装も、決して女性ではないのです。あくまでも、男性であることをベースに構築されている記号なのだと思います。「女性のようなもの」あるいは「女性以上に女性的である、その『的』の部分」を追求しているように、僕には見えます。 |
円山 2008/07/21 05:49 |
素早いお返事ありがとうごさいます。すぐ読ませていただいたのですが、書き込む時間がなく遅くなりました。 |
よしな 2008/07/25 22:26 |
| << 前記事(2008/02/23) | トップへ | 後記事(2008/02/27)>> |