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help リーダーに追加 RSS 【A Gay's Mumble】 僕ら♂♂二人が抱えている問題

<<   作成日時 : 2008/01/30 03:23   >>

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 ヤツは、ここのところお母さんの具合が悪かったことを、僕に黙っていた。心配させまいと考えてのことだろう。
 お台場の未来館で、僕ら二人、ひととおりの見学を終えたタイミングで、ヤツのケータイが鳴った。お母さんからだったようだから、僕は遠慮して少し離れ、独りで辺りをふらついていた。
 ケータイを切ったヤツは、重苦しい表情をしていた。
 <何かあったのか>と尋ねてみると、お母さんが、<今日は帰って来られないのか?>と弱音を吐いたのだと言った。そこで僕は初めて、ここのところヤツのお母さんが体調を崩していることを知った。

 ヤツのお母さんは、癌を患っている。
 とは言え、深刻な病状ではないと想う。自宅療養ができるコンディションなのだが、ときどき体調を悪くされる。昨年末から正月休みのころは、処方されているステロイド剤がよく効き、比較的お元気で、積極的に散歩へ出ておられたと聞いていたから、ヤツも僕も安心していた。ここの数日間、お母さんが不調を訴えておられたことを、ヤツは僕に告げることなく、僕らは休日のデートに赴いたのだ。

 僕は、ヤツのお母さんが具合を悪くしているのなら、
「今日のデートは切り上げて、帰ってあげたらどうだい」と言った。しかしヤツは、
「今夜は、そっちに泊まるよ。明日、いつもより早く帰るから……」と応えた。

 ヤツは、母ひとり・息子ひとりの家族。
 親類は、遠方。

 お母さんの面倒は、どうしてもヤツが看なくてはならない。ヤツは、そのことに強い責任感を抱いている。
 ちょうど、ヤツの仕事も切り替えの時期が近付いている。お母さんの病気を慮りながら、加えて経済的にも支えて行かなくてはならない。

 そして……、僕……という存在。

 お母さんの病気と仕事探し。お母さんの不安定な病状が気掛かりな上、新しい仕事が首尾良く見つかるかどうかとの不安感。
 ヤツは、軽いノイローゼになっている。
 頭の中が、どうしたら一番良いのかと、心配ごとばかりが煮詰まっている。
 無理もない。
 かわいそうで仕方がない。
 でも、僕が手助けできるのは、励ましてあげることぐらいしかないのだ。

 もしも、僕が物書きとして、もっとしっかり結果を出していれば、―――ちゃんと稼げていれば、―――あるいは、こんな無謀な挑戦などしないで、堅気の仕事に就き、安定した収入を得ていれば、ヤツのことを、確実に支えてあげることだってできているだろうにと、僕は自分が情けなくなる。

「……僕が、……こんな状態だからな」
 そう詫びると、ヤツは、
「しんちゃんが居てくれるから、オレはどうにか生きていられるんだよ」と、いつも同じように首を横に振る。
 僕のほうこそ、ヤツが居てくれるから、こうして頑張っていられるのだ。

 ヤツは、お母さんの具合が良くないときも、僕と会ってくれる。僕のうちへ泊まりに来てくれる。もちろん、僕は幸せだ。
 本当なら、ヤツだって、体調の悪いお母さんのそばに居てあげたいのだろうに。二人と居ない肉親なのだから。

 僕は、自分の存在が、ヤツにとって疎ましいものなのではないかとさえ感じてしまう。お母さんに、とても申し訳ないことをしているような気になる。僕が居るからこそ、ヤツをお母さんから奪ってしまっているのではないのかと、自分を責め立てたくなる。

 でも、僕はヤツに逢いたい。
 ヤツもまた、僕に逢いたいから、
「今夜は、しんちゃんのうちに泊まる。明日になれば、母さんの体調、良くなるかも知れないしさ」
 お母さんの面倒を看なくては―――という責任感との狭間で、内心、重々しい葛藤に苦しんでいる。

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 僕とヤツは二人して、同性愛にかまけ、ヤツのお母さんを蔑ろにしているのだろうか? 同性愛とは、かくも身勝手な愛なのだろうか? 僕らは、罪な存在なのだろうか? 二人に共通の思いは、油断すると、言いようのない自己嫌悪にも通じそうになる。

「三人で暮らせたら……いいのにね」と、不意にヤツがこぼす。
「そうだね。僕らのことを、お母さんにちゃんと話して、解って貰えたら、最高だよね」
「でも、母さんには言えないよ」
「ああ……。ま、そりゃそうだけどさ」
 最近、ヤツと僕と、そんな会話をする回数が増えた。

 男女のカップルであれば、こうした悩みをどう解消へと導くのだろう。
 直ちに結婚―――とまで踏み切ることができないまでも、病気の親を世話するため、交際の事実を明かし、片方が、相手の家に上がらせて貰うことだって、きっと可能なのだろうと想う。
 無論、男女カップルとてケースバイケースなのだろうから、親が認めない交際関係であれば、ヤツと僕が抱える悩みと同様なものを味わうことになるかも知れない。

 しかし、ゲイ・カップルである僕らと比べ、男女カップルのほうが、圧倒的に解決の方策が多いだろうし、そもそも、僕らほどの悩みや不安に襲われる要素が少ないと想う。男女の交際は正常で、男同士の交際は異常だ―――と、一般には思い込まれているからだ。

 これを機に、思い切ってカミングアウトをしてしまえば、問題がクリアされるのかと言えば、決して、そのように単純なものではない。

 少なくともヤツは、こうした状況―――にありながら/であるからこそ、お母さんへカミングアウトをするまでの決心がついていない。いや、きっとカミングアウトをすることなど無いだろう。病気で苦しんでいるお母さんの心に、余計な重荷を負わせたくないと考えるのは、至極当然である。僕も、その点では全く同じ境遇を抱えているからだ。

 僕の母もまた、やはり癌と、そして歩行障害のため、入院生活を送っている。
 軽い認知症が出てしまっている僕の母や、日頃、母の病院通いを続けている年老いた父に、いま<僕はゲイなんだ>と告げたところで、それは、かえって両親の心を苦しめることになるに違いない。だいいち母は、十五分も経てば、僕の告白さえ、忘れ去ってしまうはずだ。

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 ヤツと僕と、そしてヤツのお母さんとで、できることなら三人で一緒に暮らしたい。

 経済的にも、ヤツと僕とで協力すれば、現状より無駄を省けるわけだし、安定感も増すだろう。ヤツは、安心して仕事選びができる。僕が、ヤツのお母さんを看て差し上げることができる。理想的だ。
 入院している僕の母についても、父と交代で、きっとどうにかなる。

 でも、三人で暮らすことは、容易ではない。

 ヤツと僕に、勇気が無いと言えば、全くその通りである。いっぽう、単に勇気を発揮するだけで済むことでもないのだ。
 患っている、ヤツのお母さんを思えばこそ。ヤツの気持ちを考えればこそ。

 僕ら二人が抱えている問題は、斯くの如く、大いに複雑なのである。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
軽はずみには申し上げられないものの、まずは彼の「親友」という立ち位置から、少しずつ彼のお母様との距離を縮めることはできませんでしょうか?親友が友人の家を訪問するのはよくあることですし、まずはそこから始められては?
これは想像なのだけど、もしかしたら彼のお母様は、単に一人である「寂しさ」から逃れたいだけなのではないかな?と思いました。そして彼氏もその寂しさの重みを一人で引き受ける事に、もはや耐えきれなくなっている。「今夜は、しんちゃんのうちに泊まる。明日になれば、母さんの体調、良くなるかも知れないしさ」という言葉は、とても切実なSOSだと感じました。
彼とお母様だけでは、お互いの気持ちが煮詰まってしまうのではないでしょうか?まずは何よりもお母様の寂しさを解消することを考えて、3人で楽しく夕食を囲み、会話を楽しめるような環境作りを目指されては?彼氏のお母様は、もっと人と触れ合いたいのではないかな?甘すぎる考えだったら申し訳ない。
darimana
2008/01/30 17:03
>darimanaさん
 とても的確なアドヴァイスを頂いたように感じました。どうもありがとう。ヤツのお母さんとは、すでに友人としてお会いしたこともありますし、なるほど、ヤツと三人で会食などの機会を持つのは、良い方法かも知れません。ヤツと相談してみます。恋愛関係にあるところを隠し、友人として会うためには、演技力を要します。僕は大丈夫だとしても、ヤツのほうがどうなのか、それを確認します。もしかすると、ヤツのお母さんが、ヤツと僕との関係を薄々察知している可能性も全く無いわけではありませんが、その辺りを含め、ヤツの心構えがどうなのか、大事なポイントです。カミングアウトが絡んでしまうと、問題が複雑化しますので。あと、ヤツのお母さんの体力などにも配慮が必要でしょう。とても気を遣う方のようで、気疲れさせてしまうことを、ヤツは懸念するのです。いずれにせよ、いろいろな意味でバランスをとることに心掛け、あまり深刻に考えないようにしたいと思っておりますが……。(^^)
円山
2008/01/30 23:10
円山さんの真面目さを実感する文章です。
重たい話ですね。一晩考え込んでしまいました。前のコメにも有る通り、ルームシェアする親友程度で御母様との距離を縮めれば・・・

「愛し合う二人」の姿を隠すのは、もしかしたら非常に不本意かもしれませんが、いわゆるプライオリティ付けって奴で、気持ちの整理をされてみては。。。

話が広がり過ぎるので、言及は避けますが、「わざわざコノ場で言わなくても良い物」ってのもあるかと思います。

御母様も子供じゃないでしょうし、何となく気はついてるかもしれません。

私としては病気の御母様が一人で不安になってる方が非常に心配です。仲の良い親友が、親の世話も気遣うって程度で良いのでは?

とか言いつつ、私は親の世話は兄に押しつけてます。それはそれなりに理由がありますが、まぁね。

ですので、円山さんの真面目さには頭を垂れるのみです。
名古屋のきりたんぽ
2008/01/31 07:30
>名古屋のきりたんぽさん
 一晩も考えて下さいまして、ありがとうございます。痛み入ります。幸い、ヤツのお母さんも、先だってよりは体調を戻され、少しホッとしています。ヤツも僕も、物事を悪い方へ考えるタチで、一緒になってウンウン悩んでいるところがあるので、あまり良くないなあと反省しています。ご提案を受け、機会をみつけて、ヤツのお母さんと、もっと交流するよう努めたいと思います。ついつい、カミングアウトを絡めて深刻になりがちですが、もっと単純に、楽天的に捉えるべき側面もありそうですね。いろいろ、ご心配をいただき、本当にありがとうございます。重ねて、お礼申し上げます。
円山
2008/02/01 02:58

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